文字語り日刊はこはこ松本家のもじ

伊予鉄道、市内電車内の文字

2014年5月11日

「お降りの方はこのボタンを押してください」の文字、なかなか味のある文字です。種類的には丸ゴシックでしょう。ひらがなが極端に小さくてカタカナと漢字が大きい。ちょっとレトロな印象ですね。手書き感があるようなないような、この曖昧な感じが好きです。
少し古い型の電車には、最近使用されていないような書体が、あちらこちらに使われています。

201405-10-11

通常、公共交通機関では、可読性や視認性、判読性の良い書体が多く使われており、それはとても良い事だと思います。
ただ視認性とあわせて個性をできるだけ抑えたゴシックや丸ゴシック体がそこかしこに使われていて、どれも同じ顔といった雰囲気になってしまっているように思います。公共交通機関で使用する書体は先ほど挙げた3点がバランスよく備わっていること、対象物の特徴を損ねないもの、あとサインの素材に調和するものと、色々配慮しなくてはなりません。
まだまだいろいろ考えねばならないことがたくさんありますが、このあたりは「公共交通機関のユニバーサルデザイン―福岡市営地下鉄七隈線トータルデザイン10年の記録
」(余談ですが、福岡時代に半年だけこのお仕事のお手伝いをさせていただきました。)という書籍を是非是非!参考にして頂くとして、話を戻します。

「お降りの方はこのボタンを押してください」の文字ですが、この雰囲気を持った文字を伊予鉄ではよくみかけるような気がします。でも実際探してみるとみあたらない・・・。ひょっとしたら子供の頃の記憶と混同しているかもしれません。
デジタルできっちりとした書体もよいですが、どことなく手書きの「ゆらぎ」のようなものがある文字をみると、ちょっと気分が和らぐような気がしませんか?

最近は復刻版やレトロ感をだすといった企画で、空間や雰囲気をつくる際、内装ばかり気を取られがちですが、こういう細かいところも考えられていないと、雰囲気を壊してしまいます。
だって、レトロな感覚に浸りたいのに旧に機械的に出力された案内板がバーンと張り出されてみるのを想像してみてください。興ざめしませんか?

伊予鉄さんは狙ってやっているかどうかはわかりませんが、古い車両にあう案内文字。とってもグッドです。

201405-10
ガラス磨きのスプレーを片付け忘れているのがちょっと笑いのツボに入ってしまいました。
ちゃんと手入れしているんだなぁと感心したのと反対に忘れずに片付けて〜(笑)と、ツメの甘さがなんとも。